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シウダードフアレス

以前からシウダードフアレスの治安について色々と気になっていて、そのうち調べておきたいなと思っていたので少し手をつけてみることにしました。私が最後にフアレスに行ったのは2014年で、その後どうなっているのかが気になっていました。ここでフアレスの状況を調査するとともに、近年のメキシコの治安についても見てみようと思います。

なぜシウダードフアレスが治安の悪い都市に?

そもそもシウダードフアレスがなぜ治安の悪い都市として認識されるようになったのか。1番の主な原因は麻薬組織と警察による暴力事件がメキシコ北部で頻発していたことではないかと思います。2006年〜2012年までメキシコの政権を担っていたフェリペ・カルデロン大統領(PAN・国民行動党)時代の話で、ネット調べによると在任期間中の2012年までに、麻薬犯罪撲滅に関わった警官を含む約6万人以上の人々が命を落としたといわれてます。

ちなみに20109月までの死者はおよそ28千人とも言われているので、10年から12年までのわずか2年間の間に急激に死者の数が増えていることがわかります。その大半は国境に近い州の人々であったとも言われており、なかでもシウダードフアレスは最前線だったわけです。

世界で最も治安の悪い都市ランキング50

さらにこの話を決定づけるかのような調査があります。メキシコの市民団体(El Consejo Ciudadano para la Seguridad Pública y la Justicia Penal A.C.)が毎年発表している「世界で最も治安の悪い都市ランキング50(Ranking de las Ciudades más violentas del mundo)」というもので、2009年ごろから調査が始まり、2011年からランキングとして発表されています。

このランキングを見ながらシウダードフアレスをベースに独自の表を作ってみました。

この表を見るだけでも気になるところが山ほどあるのですが、ここではあえてフアレスについてだけを見てみようと思います。

2011年のランキングではシウダードフアレスが50位中ワースト2位となっています。2011年以前の資料はないものの、メディアでは「シウダードフアレスはもう世界一危険な都市ではなくなり、サンペドロスーラに置き変わった(Ciudad Juárez ya no es la ciudad más violenta del mundo, la desplazó San Pedro Sula)」といった記事が2012年に出ているので、それまでの最も危険な都市がフアレスであったことがわかります。

2023年6月追記:2011年以前のランキング資料が以下のHPからダウンロードできるようになっていました。2008年〜2010年までシウダードフアレスが1位になっています。

https://geoenlace.net/seguridadjusticiaypaz/webpage/archivos.php

2011年にホンジュラスのサンペドロスーラが1位にランクインし、その後4年にも渡ってワースト1位に居続けたのは、マラス(米国から本国へ送還された元ギャングたちによって構成される現地のギャング団)による殺人件数が増えたことによると思われますが、ここでは探らないことにします。

果たしてマラスによる殺人件数が増えたことによって、一時的にフアレスがワースト1位ではなくなっただけなのか?それとも実際に事件数そのものが減ったのだろうか?

表を見る限りでは答えは後者の方で、カルデロン時代が終わると共にフアレスのランクも大きく下がっているのがわかります。そして殺人件数も桁が変わるほどに減っています。2015年に至ってはランキング50の中にすら入っていませんでした。

2012年以降ペニャニエト政権(PRI・制度的革命党)に移り変わってからは、フアレスに限らずですがメキシコ全体がランキングから少し遠ざかっているように思いませんか?カルデロンが派手に「麻薬戦争」を広げ、PRI政権に変わると同時に治安が良くなる。これっていかにPRIが…というメキシコの闇を思わず想像してしまいたくなりますが、ここまでにしておきます。

兎にも角にもこの時代になると「フアレスは危険」というのは一時的にとはいえ、もう過去の話になっていたわけですね。実際に私がフアレスを訪れたりしていたのもこの時期でした。

しかし。

2018年からメキシコはロペス・オブラドル大統領(MORENA・国民再生運動・以後AMLO)へと変わり、以降メキシコの治安が再び悪化してきているのが表を見ていて明らかにわかります。フアレスが2019年にまたワースト2位に戻ってしまい、1位となっているティファナもやはり国境の都市です。

メキシコ中央・バヒオ地区の犯罪率が高くなっている

国境地帯は麻薬が米国に流れる闇ルートの舞台でもあり、カルテルが存在する地帯でもあったりするので、治安が悪くなるのはランキング無しにしても想像できるのですが、ここで国境とは違う目線で注目するべきことが新たに出てきました。

それは2020年にセラヤがワースト1位になっていることです。セラヤはメキシコ中央部のバヒオ(Bajio)と言われる地域にある都市で、バヒオは近年日本の自動車メーカーが相次いで工場を建設、稼働しているエリアでもあります。独自調査の表ではピックアップしてないのですが、ランキングを見ると2019年頃からバヒオ地区にある都市のランクインが目立つようになり、さらにはワースト10内でも常連となってきているのです。自分がかつて生活していたレオンもランクインしているのには驚きました。

ワースト10内に入っているメキシコの都市は2018年以降毎年増え続け、2022年に至っては、ついにワースト1位から10位までの9都市をメキシコが占めるという事態に。

なぜこのようなことになってしまったのか。麻薬関連ももちろん考えられるところですが、それだけではないはずです。

AMLO時代を人口10万人あたりの殺人件数で見ると、「麻薬戦争」をしていたカルデロン時代の2011年に比べるとかなり減っているので、麻薬関連プラス種類の違う犯罪(本来の犯罪?)も入り組んでいることも考えられると思います。

メキシコではインフレ率を元に賃金も毎年上がっているそうですが、今はそれでも賄えないほどに物価も上がっているそうです(確かにここ最近は私もメキシコへ行くたびに何もかもが高い!って感じてました)。そういった状況、生活苦に喘ぐ人たちが「もうやってらんない」と、犯罪に手を染めてしまう。ナルコになってしまう。犯罪もビジネス化され、まともに働くよりも稼げてしまうといったような、失業率やメキシコの低賃金に関連する問題も絡んでいるのではないかと思います。

また、平和で豊かな暮らしを求めて中南米諸国、あるいはメキシコから北米を目指し、移民となろうとする多くの人たちが、中継地点となるメキシコで悲運にも命を落としてしまうこともあるようです。移民希望者たちは団体で行動することも多いが故に、事件に巻き込まれてしまう人の数も多いのかもしれません。

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MORENAは現在「麻薬戦争」などやっていませんし、かといって麻薬組織と繋がっているとは想像し難いです(あくまで個人の想像)。となると、おそらくこれがメキシコの本来の治安のような気がします。つまり悪いってことですよね・・・。

ちなみに首都メキシコシティも危険なのか?という話になるとこの記事とはまた違った話になるので、別の機会に記事を書きたいと思ってます。

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